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豊かな台所というものがあるとすれば、それは冷蔵庫にキャビアやウニやメロンが入っている台所ではなく、布巾の種類、枚数がたくさんあって、何枚でも心置きなく使っている台所ではないか、と思います。 まして、いつも真っ白い洗濯の行き届いた布巾が準備されている台所なら、その台所の主は料理の腕も相当なものだと思われます。
料理が嫌い、苦手という人は、布巾の大切さにまで思いが及ばないでしょうから。 食卓をもの置きにしない、料理に合わせやすく、多用できる器を選ぶ、器をかわいがる料理が映える和の食卓料理は、どこで、いつ、誰と、どんな雰囲気で食べるか、によって味に違いを感じます。
さらに、盛りつけや供し方によっても違って感じるものです。 そこで、私の経験の中から、料理が映え、よりおいしいそうに見える和の食卓の演出法をアドバイスいたしましょう。
ここでも、他の和と同じように、「食卓はシンプル」であることが第一の条件だと思います。 調味料セットやお茶セット、お菓子がいつも出ていたり、はたまた読みかけの新聞や雑誌がのっていたりするような雑然とした食卓は、なにもない状態にしてみましょう。
食事のときに必要なものだけ、そのつど用意するセッティングに変えるのです。 すっきりした食卓でいただく料理とゴチャゴチャいろいろなものがある中でいただく料理、想像するだけでどちらがより料理が映えるか、どちらがおいしく感じるか、がおわかりになると思います。
なにもない食卓には、季節の花の一輪挿し、和の布のランチョンマットまたは木製やおしき漆塗りのお盆か折敷を整えれば、それだけでもうおいしい食事を予感させる食卓は万端です。 シンプルで品のいいものは、おしゃれなどでも、いろいろなものに調和する応用力をもってまずから、そんな食卓なら和食に限らず洋食、中華などの料理も引き立ててくれるはずです。
料理を盛る器は、料理の見た目を大きく左右するものです。 だからといって、高価な器であればいいということではありません。
料理に合った、かわいがられている器に盛りつけるしことが望ましいと思います。 一見してきれいな器や豪華な器のように主張する器ではなく、これもまたシンプルな形や色柄の器の中に多いものです。

そういう器こそ、中に盛られる料理を引き立て、結局使いやすい器といえるのです。 折に触れて日常の食卓でも使ってほしいのです。
料理に合う器とは、いい器こそしまい込み、さらに多用できる器がおすすめ。 特定の季節を象徴する絵柄があったり、特にいろいろな料理を盛ることは難しく、特殊な色であったり、個性的な形でありすぎます。
応用のきく色、柄、形の器なら、和洋中の料理を選ばず、季節やもてなしと家族の食事の違い、調理法などの違いも問わず、幅広く使いこなせます。 よたとえ少ない器でも多彩な食卓が演出できるはずです。
よい器はかわいがって育てられるものです。 いい例が備前の器です。
備前焼は、焼き締めといって粕薬がかかっていませんからザラザラ、つやガサガサの肌ですが、毎日のように使っていると三年もすれば滑らかな肌になり、艶も出て、締よい器とはなんでしょう。 垢抜けする、といってもいいでしょう。

でも、飾っておくだけではだめ。 料理やお酒を入れたり、触ったりして語りかけてあげると、応えてくれるのです。
食べる人にとってだけいい器でも「いい器」とはいえません。 料理を盛る人、運ぶ人、洗う人にとってもいい器でなければ。
変わった形で面白いわ、と食べる人が思う器でも、料理の盛りつけが難しい、不安定で運ぶとでこぼこがあって洗いづらい、というような器であってはいけないと思います。 かつて私は、九州各地に懐石料理の出稽古に通っていました。
その中で、唐津の陶芸家の方たちにも教えていましたが、なぜ陶芸家というと、料理ができないと器の大きさがわからないから、ということなのです。 用途に合ったものが器であって、器が先に歩くことはないのです。
先に器ありきでは、使いにくいのです。 その器は、あくまで作家の考える大ききであって、料理を作る人、料理を盛る人の工夫大きさではないからです。
どこかチグハグになってしまうのです。 器は料理の着物といったのは北大路魯山人ですが、着物が、着る人はもちろん、着る場所や場合、小物との調和が大切なように、どんなに素晴らしい器も、器だけがひとり歩きしてはだめです。
器を使うのは家族の食事か、どんな料理を盛るのか、普段の食事か、おもてなしか、おめでたい宴かなどで違ってきます。 お膳や折敷を使う場合、原則的に四角い膳には丸い器、丸い膳には四角や長方形の器が合います。
通常、食事には複数の器が使われますが、主菜も副菜もみんな同じ形の器より、さらに、いろんな形の器がそろうのが望ましいのです。 器を選ぶときは、見た目だけでなく、どんな料理が合うか、使い勝手はいいか、手入れはしやすいか、他の器との相性は、選んだ器を大切にかわいがって育てていけば、などを考慮したうえで選んでいただきたいと思います。
きっとあなたにとってのいい器になるでしょう。 多用ができる陶磁器のそろえ方ある程度食器がそろっているお宅でも、気に入ってないのと出番が回ってこない器が必ず何点かあるはずです。
結婚生活やひとり暮らしを始めるときに、「とりあえず必要だからという理由でそろえ器ではないでしょうか。 とりあえず食器が必要なときには、まだ自分のライフスタイルや住まい方の方向が定まっていないはずですから、どうしてもそろえるべき器の傾向も決まらず、なんとなくそぐわないものもコレクションに入れてしまいがちです。
でも、暮らしを重ねていく中で折々に集まってきたものは、ライフスタイルなどの方向づけができつつありまずから、暮らし方や感性にしっくりするものが集まるのです。 間に合わせが一番いけないと思います。

最初に器をそろえるときは、本当に必要なものだけ、シンプルで幅広い料理に合う、器多用のできるものをそろえ、徐々に買い足していくことをおすすめします。 「できれば作家の作品を選びなさい」といいたいのです。
私は、自他ともに認める行動派ですから、いい作品を見れば作家のところへ押しかけて親しくさせていただき、自分の意思を伝えて私の手と体に合った器を作っていただいています。 デパートや器の庖、画廊などでやっている個展でこの器、私の趣味にぴったりというものをみたときは、作家をあなたのリストに入れておきましょう。
もし、その作家がお住まいの場所へ旅する機会があったら、工房見学をさせていただくといいでしょう。 お気に入りの食器だけでそろえるのは、なかなか難しいことです。
ましてお気に入りだけど、もったいなくて使えないという器もあるでしょう。 でも、器は使ってこそ価値があるものです。
安い器も気に入らなくて使わなければ、結局高いものになりますが、高価な器も存分に使えばお高くはないということです。 ご家庭では、すべての料理を各自の器に盛って出すというより、いっしょ盛りの取り回し式のほうが多いと思いますし、そのほうが合理的だと思います。

そういう点から考えても、多用という点からも、まず取り鉢、二組そろえると便利でしょう。 取り鉢にできる鉢なら、煮ものもサラダも汁のあるものも、お菓子も盛れますし、麺類だっていただけます。

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